Synopsis
「お前の字は男のようだ。書いたものに、情がない」——そう言われて離縁状を渡された日、わたしはその離縁状の誤字を三つ直してから、侯爵家を出ました。
八年間、あの方の手紙は一通残らずわたしが書いていました。誰に何を書いたか、相手が何を気にしているか、控えは全部わたしの頭の中です。紙には残していません。書けば、わたしがいらなくなりますから。
王都の河沿いで代書屋の軒先を借りて半月。南から北から、噂が流れてきます。侯爵さまのお手紙が、このごろずいぶん素っ気ないのだと。
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