Synopsis

二月十四日。雨。この席でわたしはあなたを忘れることに決めた。  あなた、と書いて、まだそこに正しい名を入れられる。入れられるうちに書いておく。指がまだ綴りを覚えている。  けれど二行上のフルネームがもう読めない。インクはある。形もある。誰を指すのかが分からない。  カナエが手のひらを差し出す。いちばん最後に手放したもの。受け取れば、ほどけた糸を端から手繰るように、全部が順に戻る——。

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Kakuyomu
Kakuyomu07/23/2026
  • Current最後に消えるのは