Synopsis

昼過ぎ。自宅の団地の薄汚れた通路に立ち、おれは部屋のドアに鍵を差し込んだ。その瞬間、ふと手が止まった。ほんのわずかだったが、胸の奥にひっかかるような説明しがたい違和感を覚えたのだ。 おれは鍵を握ったまま目を閉じ、耳を澄ませた――風が吹いた。団地の敷地に植えられた木々の葉が揺れ、さわさわと乾いた音を立てている。どこかで鳥が鳴き、少し離れた場所から別の鳥が応えるようにさえずりが重なった。遠くから、からからと自転車の走る音がかすかに聞こえてきた。いつもと変わらない穏やかな午後だ。 気のせいか……。 おれは小さく息を吐き、目を開けて鍵を回した。カチャリ、と軽い手応えが指先に伝わった。だが、その小さな音は横手から近づいてくる複数の足音に上書きされた。 おれは反射的に顔を向けた。 「どうも。――さんですね」 「お迎えに参りました」

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou06/13/2026
  • Currentおれが徴兵 :約6000文字