Synopsis
祖母の四十九日を終え、八年ぶりに故郷の日永へ戻った水島拓海。
誰も住まなくなった祖母の家を整理していた彼は、押し入れの奥から古い線香花火の箱と、自分宛ての手紙を見つける。
そこに書かれていたのは、幼い頃から夏を共に過ごした隣家の少女・日野千夏のことだった。
小学二年の夏、セミの抜け殻を頭に乗せられた出会い。
毎年のように繰り返した線香花火の勝負。
負けたほうが、勝ったほうの願いごとをひとつ叶えるという約束。
そして、十七歳の夏に言えなかった言葉。
東京へ進学した拓海は、忙しさを理由に故郷から遠ざかり、千夏との約束も、祖母の家も、八年間置き去りにしてしまう。
しかし祖母の手紙は、拓海に告げる。
千夏は彼が帰らなくなってからも、毎年ひとりで庭に立ち、線香花火に火を灯していたのだと。
蕾、牡丹、松葉、柳、散り菊。
線香花火の一生に、初恋と後悔、家族の記憶、そしてもう一度始まる約束を重ねた、夏の終わりの恋愛小説。
【登場人物】
水島拓海
東京で働く建築士。幼い頃、夏休みのたびに祖母の家へ預けられていた。千夏との約束を胸に抱えたまま、八年間故郷へ帰れずにいた。
日野千夏
拓海の幼なじみで、日永小学校の教師。明るく勝ち気だが、母を早くに亡くし、拓海の祖母・節子を実の祖母のように慕っている。線香花火の勝負で、ある願いごとをずっと胸にしまっている。
節子
拓海の祖母。穏やかで芯の強い女性。拓海と千夏に線香花火の遊びを教えた人物。亡くなったあとも、一通の手紙で二人の背中を押す。
健太
拓海と千夏の幼なじみ。昔はガキ大将だったが、現在は実家のガソリンスタンドを継いでいる。拓海に現実を突きつける友人。
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