Synopsis
リナは、ずっと家の水を守ってきた。
井戸の鍵を預かり、台帳を整え、誰かの不満を飲み込んできた。
けれど婚約者に水くさい女と笑われた日、彼女は鍵束を机に置いた。
水が足りない屋敷で、なぜか粉挽き場だけは動いている。
洗濯場に流れ着いた札には、見覚えのある家の印が残っていた。
母が遺した青い手袋には、誰にも見せなかった水路の痕跡が縫い込まれている。
リナは泣き崩れない。
けれど平気でもない。
怖いまま、辺境伯の監査に同行し、自分が見てきた水の匂いを言葉にしていく。
優しい言葉で黙らせる婚約者。
家を守ると言いながら目をそらす父。
そして、彼女を哀れまず、一人の証言者として扱う辺境伯。
井戸の鍵を返したリナは、何を失い、何を見つけるのか。
母が水に残した違和感は、どこへ流れていくのか。
彼女が本当に手放すべきものは、井戸の鍵だけなのか。
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