Synopsis

「勇者よ、この世界を救ってほしい」  そう乞われた黒峰識は、静かにこう問い返した。 「救済対象の定義をお願いします。世界とは何を指しますか。人類ですか、国家ですか、生態系ですか」  礼儀正しく、有能で、誰からも完璧と評される青年。けれどその内側は、合理が九割九分を占め、感情はわずか一分しかない。怒りも悲しみも、彼にとってはただの判断材料。彼は、人を愛さない。愛し方を、そもそも知らない。  そんな勇者が、なぜか世界を救っていく。飢えた民を救い、災厄を退け、誰よりも優しい英雄と讃えられながら――その隣で、王女セレスティアだけが、かすかな寒気に気づきはじめる。  「やっと来たか」。歴代最強の魔王だけが、彼を見て笑った。「お前も同じだ」と。  愛のない優しさは、優しさと呼べるのか。

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Kakuyomu
Kakuyomu06/06/2026
  • Current誰よりも優しい勇者