Synopsis
宇垣みさとは、妹の代わりに見合いの席へ送り込まれた。相手の黒田宗平は二十三歳、整った顔立ちに年齢不相応の深みを持つ男だった。二人は「三ヶ月の婚約」という契約を結ぶ。みさとには家を守る理由が、宗平には母の思惑をかわす理由があった。恋愛ではない、取引のはずだった。
だが距離は、縮まっていく。
旅行、美術館、パーティー。宗平の秘書・涼子の存在がみさとの胸に刺さり始める頃、みさとはすでに外側にいられない自分に気づいていた。涼子もまた、長く宗平の隣にいた女として、静かに動いていた。箱根の紅葉の夜、二人は一線を越え、やがて結婚する。
だが幸福は続かない。宗平が事故で意識を失った隙に、姑が動いた。血液型の不一致を理由に離婚届を突きつけ、みさとを追い出す。行き場を失い、追い詰められたみさとが美緒だけを残して消えようとした日、ドアを開けたのは涼子だった。
「シェアしましょ」
涼子のその一言から、三人の奇妙な家族が始まった。涼子は宗平の子を産み、姑の重さを一人で引き受け続けた。そしてある日、帰り道で事故に遭い、逝く。
年月が過ぎ、宗人は書斎でワインレッドのドレスの女の写真を見つける。知らないはずなのに、懐かしい。口から言葉がこぼれた。「ママ」。その声を廊下で聞いたみさとは、泣かない。静かに戸を閉める。
宗平がエプロンの紐を直してやる。
「ごはん、冷めるよ」
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