Synopsis

「昨日の次に、今日が来る」――そんな当たり前を、彼女だけが失っていた。

大学三年の春、橘春乃の一年は、バラバラに壊れた。

四月の次が、なぜか十月。

そして六月、十二月、五月……季節が順番をなくして、彼女の意識に降ってくる。

同じ時間は、二度と戻らない。世界でただ一人、自分だけが、時間からはぐれている。

こんな話、誰にも信じてもらえるはずがない――そう、思っていた。

けれど、瀬尾理人だけは、違った。ありえない話を、一度も笑わなかった。


「いつから来た?」

それが、時を彷徨う春乃と、時間を普通に生きる彼との、二人だけの合言葉になる。

理人は跳ばない。

それでも、どの時期の彼も、先回りして春乃を助け、一冊のノートに彼女の言葉を書き留めていく。

「何度時間がずれても、俺はお前を信じる」。

その揺るがない理由を、春乃はまだ知らない。

バラバラに飛ばされた先々で、春乃は、六人の友の“見えない傷”に出会っていく。

嫉妬を隠す親友。

孤独を抱えた優等生。

本気を笑い飛ばす少年。

彼らの痛みに気づき、不器用に手を伸ばすうち、壊れたはずの一年は、いつしか、誰かを繋ぐための一年に変わっていく。

結果を先に、原因を後に――順番が壊れているからこそ、「あの時のあれは、これだったのか」と、散らばった謎が、一本に繋がっていく。

そして、すべての時間が集まる三月三十一日。

時計塔が燃えるあの夜に、本当は、何が起きていたのか。

これは、時間に翻弄されるだけの少女の物語ではない。

バラバラの一瞬一瞬で、春乃は確かに、誰かと向き合っていた。失われたと思っていた一年は、本当は――。

そして最終話、春乃は知る。

一年中、彼に救われ続けてきた自分が、実は、いちばん最初に、彼を救っていたことを。

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Alphapolis
Alphapolis06/03/2026
  • Currentバラバラの一年で、君を好きになる ~時間がぐちゃぐちゃに飛ぶ私を、“どの君”も信じてくれた~