Synopsis
無能だと告げられた朝
鐘の音は冷たく響き
石畳に落ちた影は
少しだけ長かった
誰より早く起き
誰より遅く眠り
言われた仕事をこなしても
誰の心にも届かなかった
だから追放された
そう思っていた
辺境の風は優しかった
痩せた畑
古びた井戸
ひび割れた家々
けれどそこには
数字にならない人々がいた
昔話を何度も繰り返す老人
夜になると泣く孤児
疲れた顔で笑う母親
不作に肩を落とす農夫
ルークは最初
何をしたらいいか分からなかった
祈ればいいのか
薬を作ればいいのか
答えはもっと小さなところにあった
話を聞くこと
隣に座ること
一緒に食事をすること
名前を覚えること
誰かの涙を見過ごさないこと
すると不思議なことが起きた
ポーションが輝き始めた
疲れた人には力を
眠れぬ人には安らぎを
傷ついた人には癒やしを
飲む人が本当に必要とするものを
そっと届けるようになった
王都は騒いだ
奇跡の薬だと
神級ポーションだと
大バズりだと
けれどルークは知っていた
奇跡は瓶の中にはない
老人の笑顔の中にある
子供の笑い声の中にある
誰かを大切に思う心の中にある
愛は育つ
寄り添うたびに
親切は育つ
手を差し伸べるたびに
喜びは育つ
誰かと分かち合うたびに
そして霊の実は
静かに実る
誰も見ていない場所で
神が見ておられる場所で
追放された青年は
気づいていなかった
本当に神が祝福されたのは
ポーションではなく
人を愛そうとする
その歩みだったことを
Serialization Info
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