Synopsis

妻の故郷、東北の山沿いの町。 初めて訪れた正月、俺は祠の前で老人に止められた。 「振り返ったらいかん。見られたら、向こうも見る」 その言葉の意味を、俺はまだ知らなかった。 ——— 妻が妊娠し、子供が生まれた。よく笑い、よく動き、よく振り返る子だった。 義父から言われた言葉が、ずっと頭に残っていた。 「子供は、すぐ振り返る」 ——— やがて始まった。 夜中に息子の目が変わる。知らない方向に手を伸ばす。暗い部屋で、息子の目を通して、何かが俺を見る。 それは視線で繋がり、夢に入り込み、俺の周囲の人間にまで広がろうとしていた。 ——— 名前もなく、岩の下に何百年も閉じ込められたもの。 生け贄を求め、子供を連れ去り、この土地に祟り続けたもの。 でも俺は、それが怖いだけではないと、少しずつ気づいていった。 向こうはただ、見てほしかった。 本当の名前で、呼んでほしかった。 ——— 振り返らなかった男が、最後に選んだこととは。 老人が何十年も呼べなかった名前とは。 そして、名前を呼ばれた時、それはどこへ行くのか。 ——— 怖い話だ。でも、それだけじゃない話だ。 ———

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou04/26/2026
  • Current『振り返るな、それは見られるのを待っている』 〜イギョウ様と、名前を持たぬものの話〜