Synopsis
処刑台の上で、王が断ち切ったのは「首」ではなかった。
それは、運命という名の縄だった。
身の丈ほどもある禍々しい黒鎌を担ぐ若き王、ロア・ヴェル・レヴェン。
放蕩。悪逆。快楽主義。
臣下を振り回し、敵を嘲り、民にすら甘い慈悲を見せぬ冷酷な王。
飢えという地獄に追い詰められ、穀物庫を襲い、徴税官の館に火を放った反乱者たち。
王は、彼らの罪を許さない。
だが、殺しもしない。
黒鎌が一閃する。
戒めの縄が、ばらばらに弾け飛ぶ。
処刑台から地べたを這う民を見下ろし、王は告げた。
「食うために奪ったなら、生きて返せ。生きることを奪ったなら、命で返せ」
飢えた民には、明日という苛酷な日を生き抜くための罰を。
意図的に飢えを作り出した強欲には、容赦なき黒鎌の死を。
善王ならば、哀れな民に救いの手を差し伸べただろう。
だが狂王ロアは、絶望の淵に沈む民に命じた。
自ら立て、と。
時を同じくして、大陸の歯車が砕け散る。
大陸の半分を呑み込んでいた巨獣、アステル帝国の崩壊。
皇帝の暗殺。
帝国を真っ二つに裂いた元帥、レオ・ヴィクト・クロムの反逆。
七つの王権が血で血を洗う、狂乱の戦国時代が幕を開けた。
ロアの覇道に集い、あるいは立ちはだかるのは、まともな者など一人としていない異端の徒ばかり。
王の暴走に胃を焼かれる【胃痛】の宰相ラウル。
神より金貨に祈りを捧げる【守銭奴】の僧ニコ。
己の美学で戦場を灰燼に帰す【赫灼】の魔女ヴィヴィ。
飯と戦と強い女を愛する【獣腹】の戦士バン。
酒瓶の底に魂を沈めた【泥酔】の剣士ジン。
欠けている。
歪んでいる。
どうしようもなく危うい。
だが、その問題児たちこそが、ロアの狂気を刃に変え、国を前へ進ませていた。
やがて、血塗られた戦乱の最奥で、ロアは世界の真実に触れる。
この歴史には、盤面の裏からすべてを操作する存在がいた。
戦争も、英雄の誕生も、国家の滅亡さえも。
すべては人間という種が自滅しないよう、冷徹に調整されていた。
古代の神、ノア。
「人間は不完全ゆえに、管理されねばならない」
無機質な神はそう告げる。
「不完全だからこそ、人間は自由だ」
狂王は、そう嗤い飛ばす。
黒鎌のロアは、神が敷いた退屈な生存計画を真っ向から叩き斬る。
これは、誰にも飼い慣らされない王が挑む、神殺しの戦争の記録である。
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