Synopsis

「君との婚約を破棄する。華がない。運命を感じない」 舞踏会の片隅で、王太子レオヴァルト殿下は私——子爵令嬢フィオナ・アーレンスに、たった一言でそう告げた。 三年間、精一杯努めてきた。 でも足りなかった。 やっぱり私では、駄目だったのだと。 俯いたその瞬間、頭上のシャンデリアが轟音とともに崩れ落ちた。 誰かに引かれた私は難を逃れ——だが殿下の腕には、破片の傷が残った。 そしてその夜から、何かが変わった。 翌日から殿下の周辺では小さな齟齬が続く。 書類の紛失、馬車の故障、人心のすれ違い。 一方の私には、不思議なほど物事がすんなりと転がり込んでくる。 真実を告げたのは、宮廷魔術師だった。 「殿下の幸運は、最初から殿下のものではなかった」 私は"黄金運命保持者"——周囲の成功率を底上げし、災厄を逸らし、縁を良い方へ引き寄せる、百年に一人の体質。 婚約の魔法を通じて、三年間ずっと私の運が殿下へと流れ続けていた。 天運の王子と呼ばれたその輝きは、私という"源"があってこそだった。 やがて殿下は気づく。 計画は議会で阻まれ、長年の理解者が背を向け、手に入るはずだったものが指の隙間からこぼれていく。 そして一ヶ月後——殿下は私の前に現れ、こう言った。 「戻ってきてくれ。君が必要だ」 でも私はもう、知っている。 その"必要"が、何を指しているのかを。 「あなたは私ではなく、"幸運"しか見ていなかった」 三年間縮こまっていた私が、初めて自分の声で、自分の言葉を口にする。 運命は奪われるものではなかった——私自身が、運命だったのだから。 派手な復讐ではない。 ただ、実力相応の場所へと静かに戻っていく王子と、初めて自分の足で歩き始めた一人の女の、小さくて確かな物語。

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou05/13/2026
  • Current婚約破棄された瞬間、殿下の“幸運”がすべて私に移りました——どうやら私は“運命の供給源”だったようです