Synopsis

若い頃に別れた女は、暖かくも冷たい女だった。 いまは幸せそうに暮らす男は、その女のいない世界で生きているだけだった。 「愛した女のいない世界と、愛した女しかいない世界の、どちらが幸せなのか」 東京から佐世保に出張した唐沢譲(からさわゆずる)は、ホテルに帰る途中で海に落ちた。 着水する直前に、水の中から二本の手が伸びて唐沢を抱きしめた。結婚する前の恋人、水川刹那(みずかわせつな)が水の中で言った。「私は水に溶けるの」 唐沢は、刹那が死んだものと思っていた。ずっと前にそんな噂を聞いたから。 刹那は唐沢と別れた後、別の男と結婚した。夫は経済的に成功し、刹那を心から愛したが離婚を切り出した。 水の中で刹那は唐沢に言う。「私はあなたしか愛せなかった。あなたを試すようなことをして後悔している」 唐沢の妻、結希子(ゆきこ)は、出張に同行した部下の城崎大輔(しろさきだいすけ)から、夫が海に落ちて病院に運ばれたと連絡を受ける。 翌日、飛行機で病院にかけつけた結希子に対し、唐沢は「海に落ちたが、岸まで泳いで戻ったら気持ちが良くて寝てしまった。気がついたら病院に運ばれていた」とこともなげに話し、「自分のことは心配はいらない、子供のことがあるから帰った方がいい」と告げる。 唐沢の母は唐沢が幼い頃に突然家を出た。母の愛を知らない唐沢を結希子は一生懸命に愛してきたつもりだが、結希子は唐沢から愛されている気がしない。今まで感じてきた無力感が、今回の件で「夫は人を愛することができないのだ」という絶望に変わった。 結希子は、城崎に「あなたが夫を突き落としてくれていたらよかったのに」と漏らし、病室で唐沢の体から女の香りがしたと訴える。 城崎は結希子と関係を持つ。

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou05/10/2023
  • Current愛は海よりも深く