Synopsis

一九三九年、秋津島皇国海軍省で、一枚の要望書が配られた。 高度一万二千メートルを飛ぶ未来の超重爆撃機を、皇都到達前に撃墜するための超高度迎撃機。 機首電探、射撃管制器、八式五十七粍機関砲、排気タービン過給発動機。 常識外れの要求を並べたその紙は、最初から「死文」と呼ばれていた。 責任者にされたのは、軍令部から海軍航空廠へ出向した真壁慎二郎。 そこは失敗作の墓場だった。 やる気のない航空廠。 素材を渋る三峰重工業。 発動機を握る中洲飛行機。 海軍省内の革新派と守旧派の対立。 陸軍過激派による暗殺。 そして、試験事故で失われる仲間の命。 それでも彼らは、未完成の槍を空へ上げる。 照和十七年四月十八日。 中国・麗水飛行場より、B-30《レヴィアサン》十三機が京都へ向けて発進。 烈風改二は追うが届かず、疾風・極は食い下がるが上を取れない。 五式改は成層圏に届くが、数が足りない。 最後に岩国から、十六機の《天穿》が上がる。 これは、最強の戦闘機の物語ではない。 皇都が焼かれるその日に、必要な高度へ届いた、不格好な槍の物語である。

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Kakuyomu
Kakuyomu05/11/2026
  • Current天穿開発記 ―皇都上空に槍が降った日―