Synopsis
ミストラル侯爵家の一人娘、リーザお嬢様ことエリーザは、母を亡くし多忙な父の愛情に飢える六歳の少女。侍女エルナは、ここが前世で愛した乙女ゲームの世界であり、リーザが癇癪で侍女を殺め、やがて闇に堕ちる運命の令嬢だと知っていた。
誕生日の夜、父との約束は破られる。絶望したエリーザが投げつけた花瓶を、エルナは身を以て受け止めた――あらかじめ脆い模造品にすり替えておいた、その花瓶を。「嫌いにならないで」と泣く幼い主に、エルナは静かに告げる。「嫌いになどなりません。リーザお嬢様」「エルナは、ここにいます」と。
それは、運命に抗う最初の一手だった。
叱るのではなく、共に菓子を拾う日。返事の来ない手紙を父へ書き続ける日。高熱の夜、エルナは多忙な侯爵に娘の小さな日々を語り、不器用な父娘の間に橋を架けた。
二年後、八歳になったエリーザはアカデミーへ旅立つ。膝を折り遅すぎた謝罪を口にする父、自分の言葉で詫びを返す娘。エルナの袖を握っていた小さな手が、するりと離れる。
ここから先に、もうシナリオはない。未来は白紙――けれど白紙は、何度でも書き直せる。この子が、独りではない限り。
――そんな物語の後日譚。
王立アカデミーの幼年部へ通い始めて、半年が過ぎたころ……
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