Synopsis

午後になってもなお烈しい、白い陽射しが照り付ける道を足早に歩いた。晩夏に差し掛かったとは云え、陽のある内はまだまだ暑い。蒸し暑さに当てられて、幻聴を聞いたのかもしれない。目的の家に足を踏み入れたその瞬間、 「刺せばいいのよ」  哀しげな少女の声が耳に触れたような気がした。立ち止まり、辺りを見回す。誰もいない。  不思議に思いつつ、ごめんくださぁい、と薄暗い室内に向かって呼び掛けてみた。立派な造りの広い家だが、人気がない。二度、三度、声を張り上げたところでようやっと、足音が近づいてきて、家の奥から藍染めの単衣を纏った友人Kがゆらりと姿を現した。  記憶の中の彼より幾らか痩せている。肌も蒼白く幽霊じみている、という縁起でもない印象を、私は努めて意識しないようにした。

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Kakuyomu
Kakuyomu05/10/2026
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