Synopsis
記憶がない。
自分が何者なのかも、なぜここにいるのかも、何も。
ただ一つわかるのは――俺は今、魔王だということ。
そして目の前に、倒さなければならない勇者がいるということ。
しかし、剣を振り上げた瞬間、右手に握る古びた手帳が脈動した。
《 殺すな 》
誰の声か。なぜそう思うのか。わからない。
わからないのに、剣が止まった。
◆
大学院生・神崎カイは、二十三歳で過労死した。
目覚めた時には魔王アスモデウスになっていた。
記憶はほぼゼロ。残ったのは右手の手帳と、左目に映る「何かの構造」だけ。
勇者パーティとの戦闘の中で、断片的な記憶が戻ってくる。
戻るたびに、一つの事実が輪郭を持ち始める。
――この世界は、俺が作った。
設計者が、自分の設計の中に閉じ込められている。
神が、自分で仕込んだトラップに気づいていない。
そして記憶を取り戻すほど、「勇者を倒してはいけない理由」が明確になっていく。
愛し方を設計でしか表現できなかった男が、
自分が作ったものではなく、自分自身を必要とされたい男が、
創った世界の中で、何を選ぶのか。
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