Synopsis
「いいね」が消える日が来る、と誰かが言った。
はじめに消えたのは、他人のものだった。次に、自分のものがひとつ、またひとつと減っていく。理由は知らされない。ただ、確かに触れたはずの痕跡だけが、静かに世界から剥がれ落ちていく。
教室の窓際、光のなかで笑っていた彼女の投稿に、私は一度だけ触れたことがある。言葉の代わりに差し出した、小さな肯定。名前を呼べなかった私にとって、それは確かに存在したはずの選択だった。
だが、それも消える。
触れたという事実が消えたとき、残るものは何か。あるいは、最初から何も残っていなかったのか。
過ぎ去った時間と、呼ばれなかった名前のあいだで、私はまだ立ち尽くしている。
これは、記録にも記憶にも留まらなかった感情についての物語。
Serialization Info
Web Novel