Synopsis

四月の終わり、雨上がりの水曜日の昼休み。教室で誰にも気づかれない地味な高校生・凪一輝は、購買の混雑を避けて旧校舎の屋上で弁当を食べる習慣だった。そこで彼は、フェンス際で泣きそうな顔をしている学年一の優等生──「氷の生徒会長」氷見冴を見つけてしまう。 翌日、廊下ですれ違った彼女は、凪を見ても何の反応もしない。ところが次の水曜日、屋上の彼女は静かに振り向いて呟いた。「……また来てくれたんだ」。なぜ"また"なのか。なぜ水曜日だけ、彼女は別人みたいに笑うのか。 毎週水曜、屋上の真ん中の同じ位置に立つ冴。あんぱんが好きで、本の話で力の抜けた笑顔を見せる彼女。けれど火曜の廊下で勇気を出して声をかけると返ってきたのは「どちら様でしょうか」──水曜以外の彼女には、凪の存在そのものが届いていなかった。観察者気質の凪はノートに八つの違和感を書き連ね、物理の柊先生に「時間って、戻れますか」と尋ねる。そして辿り着く仮説。彼女は、未来から水曜の昼休みにだけ戻ってきている。 「私、未来から戻ってきているの」──風の中で、冴はようやく真実を告げる。彼女が救おうとしていたのは、未来で事故に遭った"凪自身"だった。何度も何度も水曜の昼休みを繰り返し、ひとりで観測点を保持し、冷たい手のひらで彼の隣に座り続けてきた。 「未来を選ぶ? それとも、今の私を選ぶ?」彼女の問いに、凪は第三の答えを返す。「どっちも、変える」。観測点をふたりで保持すれば、彼女が戻ってこなくていい未来へ辿り着ける。「俺が、君の水曜になる」──水曜の昼休みは、終わった。次の水曜日が、ようやく始まる。

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Kakuyomu
Kakuyomu05/07/2026
  • Current氷の生徒会長が毎週水曜だけ俺に甘える理由は、彼女が未来から戻ってきていたから