Synopsis
大きな河と海の近くに作られた港町に、治安放棄されたビル街がある。
陽の光が届かない、ビル同士が排気口や換気扇を露出して背中合わせしている、そんな道をいくつも曲がった先に、そのお店はあった。
路地裏の入りにはホームレスや横たわっているというのに、このお店が佇む通りには一人もいないから、かえって気味が悪い。
ここに来る者のほとんどが買い手だ。買い手同士が会話をすることはない。
たまに声をかける真のもの好きはいるが、大半は相手を、このような場所に来る者なのだなと見下していたし、相手もまた自分のことを見下されているだろうという自覚を持っていた。
古い蛍光灯が薄暗く照らす廊下を歩いた先に、鉄のドアがある。
中はより一層暗い。至近距離でようやく人の顔が見えるような明るさで、壁のポスターや、アクアリウムのネオンライトが色濃く広がる部屋に、一人の男が立っていた。
男は入店客に気がつくと、不気味な笑みを浮かべながら、いらっしゃいませと頭を深く下げた。
※この話はフィクションです。
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