Synopsis
「お前のような女に、この国の財務は任せられない」——十年間、王宮の財務を一手に支えてきたイルゼ・ヴェストは、ある日突然、横領の濡れ衣を着せられ断罪された。
婚約者である宰相の息子ハインツは庇うどころか、新たな令嬢の手を取って微笑んでいる。味方はゼロ。地位も名誉も、十年の献身も——すべてが一瞬で消えた。
けれどイルゼは泣かない。なぜなら、彼女は知っている。この王宮の財務がどれほど脆いか。自分がいなければ、三日で資金繰りが破綻することを。
「定時で帰ります」
静かにそう告げた彼女の退勤が、王宮を揺るがす第一歩になる。消えた予算、行方不明の物資、不自然な契約書——イルゼが手を離した瞬間から次々と露呈する矛盾。それは十年間、彼女一人が繕い続けてきた巨大な歪みだった。
冷徹な王家の監査官アルヴィンとの出会い、信じていた上司の裏切り、そして命がけの告発。観察と証拠で静かに反撃する社畜令嬢の「ざまあ」は、やがて国そのものの膿を暴いてゆく。
——果たして、イルゼが最後に守るのは国か、それとも初めて「定時」に見つけた自分自身の人生か。
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