Synopsis
『追放されたインフラ魔導士、砂漠の国を救う』
砂の国に、雨は降らない。
枯れた井戸は風に鳴き、
ひび割れた街道は、
旅人の夢を呑み込んでいた。
誰も空を見上げ、
奇跡の光を求めていた。
けれど――
国を救ったのは、
誰にも見えぬ場所で泥にまみれる、
ひとりの魔導士だった。
彼女は炎を操らない。
雷で敵を討たない。
聖なる光で喝采も浴びない。
ただ静かに、
崩れる地盤を支え、
濁る水を浄め、
人々が明日も生きられるよう、
道を繋いでいた。
誰にも知られず。
誰にも褒められず。
――それでも。
蛇口をひねれば水が出る。
夜道には灯りがともる。
橋は崩れず、
城壁は風に耐える。
その“当たり前”こそ、
彼女が紡いだ奇跡だった。
砂漠に水が流れた日、
民は初めて知る。
国とは、
王の玉座ではなく。
聖女の光でもなく。
名もなき誰かが支える、
一本の導水管の上に立っているのだと。
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