Synopsis
むかしむかし、酒好きの与作という男がいた。とんだ甲斐性なしで、『貯え』という言葉を知らない。金が入ればその日のうちに酒に替え、翌朝には懐も記憶もすっからかん――そんな日々を飽きもせず繰り返している、どうしようもない男だった。
おっとっと、おっととと……。
ふらふらよたよた。この夜も例に漏れず、飲み屋の帰り道。薄雲のかかった月の下で、与作はおぼつかない足取りで歩いていた。
「おいっと……いけねえなあ。へへへ……」
つまずいて転びそうになるのもこれで何度目か。与作は一人、照れくさそうに笑い、頭をぼりぼりと掻いた。
飲みすぎちゃいましたなあ。わかっちゃいるんだけどねえ、と調子よくへらへらと笑った――そのときだった。
前方の家の陰に、ぼんやりと橙色の光が浮かんでいるのが見えた。
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