Synopsis

「もう仲間外れだね」 なぜ私はあの時手を握らなかったのか。死ぬまでこの後悔は止まない。 貧しい暮らしが続く村では、口を減らすことは当たり前のことだった。 そんなバチ当たりなことをして、何も思わなくなったのはいつからか。 産んだ息子が背負うカゴの中で一人考える。 生い先短いトメは、カゴを下ろして泣き腫らす息子に、別れを告げ山姥山の奥へと進む。 「一緒に祝言を上げられないね」 なぜあの時、私は彼女の顔を見られなかったのか。大事な人の顔を思い出すには時間がかかりすぎた。 トメ一人の食い扶持すら惜しい村に残す、息子夫婦と可愛い孫のことを思うと、少なくなった後ろ髪を、息子と孫が引いているような気がした。 だが、山に捨て置くようにと、トメが自ら言った。 自分の死に場所を探しているのだ。彼女は最後に、行方知れずの幼なじみの痕跡を探したかった。 村八分のまま、行方知れずとなった彼女の幼なじみの痕跡だ。生きているとは思えないが、それでも幼なじみのことを忘れそうになるトメ自身が、あの時の罰を背負いたかった。 「あたし、トメちゃんのこと大好きよ!」 あぁ、罰が当たった。大好きと言ってくれた彼女が着けていた額当ての色が思い出せない。 着の身着のまま、何も整備されていない道をひたすら歩く。 獣の鳴き声と木々の揺らめく音が響く。これ以上、老いた彼女には、険しい山姥山を歩けない。 もうダメだ。と昔のことを思い出そうにも気力すらなくなったトメは、暗い洞窟に座り込む。 息も絶え絶えに、もう生きる希望がないと目を瞑る。 「おーい。おばあちゃん、大丈夫?」 その声に、昔の彼女を重ねたのは何故だろうか? 地獄からの使者が迎えに来たと思えば、孫と同じ歳くらいの男の子がいた。 ※Noraノベル様にも投稿しています。

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou05/05/2026
  • Current山姥山を越えて