Synopsis
「本日、私からお伝えしたいことがあります」
王立学院の卒業式典、全貴族子女が見守る壇上で、エリゼ・カーライル伯爵令嬢は静かにそう切り出した。婚約者の王太子クロードが口を開くよりも、一秒だけ早く。
エリゼはすべてを知っていた。半年前、侍女の偶然の一言から、クロードが愛人を囲い込んでいること、婚約破棄の準備を進めていることを察知していた。だから彼女は動いた。怒りや悲しみより先に、冷静に。証拠を集め、財産を保全し、この日のために準備を重ねた。
「婚約の解消をお願いいたします。理由についてはこちらの書類をご覧ください」
差し出した封書には、クロードの財務不正と愛人関係を示す証拠が整然と並んでいた。会場が凍りつく中、エリゼは一礼して踵を返す。誰にも泣き顔を見せる気はなかった。
ところが出口で腕を掴んだ者がいた。宰相の息子にして王太子の側近、アルヴィン・ハーグリーヴスだ。彼は目を丸くしながら、しかし確信めいた声でこう言った。
「その書類の中身——私が三ヶ月かけて集めたものと、完全に一致しています」
王太子を調査していたのは、エリゼだけではなかった。予期せぬ共犯者との出会いから、二人の関係は動き始める。頭脳戦あり、ざまああり、でも一番大事なのは、理屈では説明できない感情の話。ハッピーエンドです。
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