Synopsis
伯爵令嬢クラリスは、王太子レナートの婚約者として十年を過ごしてきた。
けれど王宮の贈与祭で、レナートは聖女ミアを隣に立たせ、クラリスに婚約破棄を告げる。
「君からの贈り物は全部捨てた。思い出ごとね」
王太子にとって、クラリスが十年かけて贈った袖留め、手袋、薬包、刺繍、祝辞の練習、遠征前の祈りは、くだらない小物でしかなかった。
だが彼は知らなかった。
クラリスは、相手に合った贈り物へ小さな祝福を結ぶ|祝品師《しゅくひんし》だった。
そして彼の剣の冴えも、人を惹きつける声も、馬を鎮める手も、王宮の祝福灯も、すべて彼女が贈り物として整えてきたものだった。
「では、十年分すべて返していただきます」
クラリスが返礼帳を開いた瞬間、王太子の栄光はひとつずつ剥がれ落ちていく。
ただし、八年前に湖で溺れた彼へ贈った“命”だけは返してもらわない。
それは復讐ではなく、クラリスが自分を失わないための最後の線引きだった。
王宮を去ったクラリスは、下町で小さな贈り物を直したことをきっかけに、王立返礼院の公爵オスカーと出会う。
一方、彼女を失った王宮では、婚約式も守護結界も次々と綻び始める。
これは、踏みにじられた贈り物を取り戻した令嬢が、今度は自分のために祝福を使う物語。
Serialization Info
Web Novel