Synopsis
十年間、婚約者を信じて王宮財務局で働き続けた侯爵令嬢イルザ・ヴァイル。
戦地にいるはずの婚約者ノルトの帰還式典で、彼女は見知らぬ女性と幼い子どもが彼の隣に立つ光景を目撃する。
——あの笑顔は、家族の笑顔だった。
十年分の献身が嘘に塗り替えられた瞬間、イルザは静かに婚約破棄を申し出る。
しかし王宮はそれを許さない。彼女が管理していた財務の要が崩れれば、国庫に重大な支障が出るからだ。
「辞めさせない」と告げる宰相。「出て行け」と吐き捨てる元婚約者。
その矛盾の狭間で、イルザは王宮の財務記録に潜む巨大な不正の影に気づく。
失った十年を嘆く暇はない。
隣国から派遣された寡黙な監査官カイ・ベルトランとともに、
イルザは証拠を積み上げ、静かに、確実に、自分を裏切った者たちへ真実を突きつけてゆく。
献身が踏みにじられた女の反撃は、涙ではなく、正確な記録と揺るぎない論理で綴られる。
——彼女が王宮を去るとき、崩れるのは誰の足元か。
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