Synopsis
私の故郷、鹿美(かみ)村には、地図に名前さえ載っていない山がある。
私がこの村に戻ってきたのは、都会での生活に疲れ果て、村役場の臨時職員としての職を得たからだ。三十歳を過ぎて戻った故郷は、記憶の中よりもずっと小さく、そして病的に閉鎖的だった。
「慎二、いいか。あの山には近寄るな。阿濁迦(あだか)様が視ておられるからな」
幼い頃から、耳にタコができるほど聞かされてきた言葉だ。阿濁迦様――それが、あの山に鎮座するとされる神の名だ。
Serialization Info
Web Novel