Synopsis

「―――え?」 ドンッという、鈍い、音がした。 その音にともなって視界が、目の前に立っている少女からゆっくりと空に移っていき、そして―――。 鈍い痛みが、身体中に広がった。 「っ!」 最初の痛みが合図となったかのように、どんどん痛みが増えていく。 階段から突き落とされたんだと、気付いた。目の前の少女に。唯一の見方だった少女に。 その事実に気付いた瞬間、沸々と怒りが込み上げてくる。 叫びたいのに、出来ない。 だから、思いっきり睨んでやる。 多分、いや絶対に。気付いていた。だってこの少女は視力が良いから。なのに、気付いた筈なのに。 「キャハッ」 あいつは、自分の口に手を当てて、愉快そうに笑ったんだ。 それを見ると、続いていた連続の痛みが途絶え、意識が朦朧とし始めた。 言っておかなくては。 「許…さない」 視界が真っ暗になり、意識が途絶えた。 「許さない、か」 階段から少女を突き落としたあと、彼女は死んだかどうかの確認もせず、反対方向に進み始めた。 ふと、空を見上げる。 「こっちの台詞だと思うけどな」 空には、美しすぎるほどの満月が浮かんでいた。

Serialization Info

Web Novel

Service languages
Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou04/03/2026
  • Current不在のユートピア