Synopsis
ここに来るまで、長かったような、短かったような……。
おれは内閣総理大臣専用車の後部座席に深く身を沈め、鼻からゆっくりと息を吐いた。途端、車内に満ちている独特の匂いが再び鼻腔を満たした。革とワックスと何かよくわからない、たぶん高級な香料が混ざり合った匂いだ。ああ、これが上級の匂いってやつか……。
そう。おれが今乗っているこの車は、“内閣総理大臣専用車”である。
つまり――。
「総理。先方までもう間もなくです」
「ああ……」
そう、おれが総理なのだ。
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