Synopsis

植木鉢が割れていた。 私が五年かけて育てた薬草の、あの鉢が。 王宮の裏庭に転がるその破片を見つけたのは、断罪の宣告を受けた翌日のことだった。 罪状は「魔導管理局の資材横領」。 身に覚えはない。 けれど弁明の場は与えられなかった。 公爵令嬢セレナが涙ながらに証言し、王太子が静かに頷いた。 それだけで、私の五年間は終わった。 (……五年。) 五年分の調整記録。五年分の巡回報告。五年分の、誰にも褒められなかった仕事。 それがひとつ残らず、「横領の証拠品」として没収された。 足元に散らばる土と根を見つめながら、私の指先はかすかに震えていた。 泣きたいのではない。 怒っているのでもない。 ただ、息が浅い。 私の名はリアナ。 この王宮の魔導管理局で、誰よりも長く働いてきた——元、主任。 踵を返す。 胸の奥で、何かが静かに組み替わる音がした。 前にも——こんなことがあった気がする。 違う場所で。違う名前で。同じように、居場所を奪われた。 あのときは、何もできなかった。 でも今は。 植木鉢は割れた。 けれど、根はまだ生きている。

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou03/23/2026
  • Current断罪された社畜令嬢ですが、私の魔導管理がないと国が回りません