Synopsis
前世の記憶がバレたら、私はこの世界で居場所を失う。
それでも、この手が知っている薬の知識を眠らせてはおけなかった。
魔法ギルドの片隅で、誰にも見つからないよう研究を続けていた。
この世界にない理論で書いた実験ノートを、ある日うっかり落としてしまうまでは。
拾ったのは、ギルド改革を志す公爵家の当主。
常識外れの処方箋に彼の目が止まり、理事直轄の予算と実験室を与えられた。
私の研究が他人の論文として提出された。家柄が実力を押し潰すギルドで、末席の研究員に反撃の手段はあるのか。
武器は魔法ではない。観察し、仮説を立て、検証し、証拠を積む。前世で叩き込まれた研究者の手順だけが頼りだ。
不器用な公爵は無言で仕事を増やし、隣を歩くときだけ歩幅を合わせてくれる。彼がいつも手袋を外さない理由を、私はまだ知らない。
前世の記憶を隠したまま、どこまで戦えるだろう。答えはまだ、実験ノートの中にしかない。
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