Synopsis

十一の夜に毒を盛られてから、少年は自分の目で確かめた水しか飲まない。 ロンベルグ帝国第五皇子エルンスト。 旗もなく、迎えもなく、荷を自ら担いで士官学校の門をくぐった。 与えられたのは日の射さない部屋と、誰も欲しがらなかった三十九人。 属国の血を引く末子に、帝国は水一杯の信頼も与えなかった。 だがこの少年の目は、人の体が漏らす言葉を読む。 衛兵の重心に古傷を、帳簿の消し跡に嘘を、そして座り方ひとつに忠誠と裏切りの境を見る。 壁に白紙を貼った。事実と数字だけを書いた。壁は四度消された。 合法の条文だけを刃にして末子を潰す官僚機構が、思考ごと壁から剥がしにかかった。 少年は四度書き直した。 鉄冠は重い。 ……だがその重さを知る者の頭にしか載らない。

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Kakuyomu
Kakuyomu03/20/2026
  • Current鉄冠の末子 ―余り物の皇子は玉座を賭ける―