Synopsis
三十二歳、無職。休職中の元会社員・小山内璃子。
明日、心療内科から精神科へ転院する――その理由は、適応障害ではなく「発達障害と複雑性PTSDの可能性」。
これまでの人生の違和感が、すべて一本の線で繋がる。
納得と同時に訪れるのは、「最初からこうだった」という逃げ場のない現実だった。
転院前夜、眠れずに歩いていた璃子は、古いトンネル脇の公衆トイレに迷い込む。
そこで聞いたのは、「コン、……カシ、……マ……」という不気味なノック音。
都市伝説――カシマさん。
信じていなかったはずの存在と対峙したとき、彼女が口にしたのは「恐怖」ではなく、あまりにも静かな諦めだった。
理不尽に傷つき続けた人生と、理不尽に現れる怪異。
その境界が曖昧になったとき、“呼ばれなかった名前”の意味が浮かび上がる。
これは恐怖譚ではなく、終わっていない人間の物語。
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