Synopsis
三歳の猫・僕は、窓辺の光の中で眠りながら、これまでの時間を思い返している。
生後三ヶ月で引き取られた日のこと。
車の中、流れる景色に怯えていた僕に、男は自分の上着をキャリーにかけた。光は遮られ、代わりに満ちたのは一定の匂いだった。揺れは止まらなかったが、匂いは動かなかった。
あれが、僕の最初の巣だった。
狭いワンルームでの暮らし。
五ヶ月後の引っ越し。
広くなった2LDK。
煙が二本になる夜。
速い足音で近づく子ども。
そして一歳半の頃、生後半年の片目の猫がやってくる。
血の繋がっていない弟。
おれ、と名乗る小さな体。
彼もまた、押入には入らなかった。
家は揺れる。
匂いは混ざる。
出来事は起きる。
それでも、崩れないものがある。
巣とは、広さではない。
壁でもない。
乱れない振る舞いと、変わらない匂いでできている。
これは、猫の視点で描かれる、
「家が巣になるまで」の三年間の記録。
そして物語は、最後にそっと問いかける。
あなたは、何を巣と呼ぶのか。
Serialization Info
Web Novel