Synopsis
東京オリンピック開催決定を受け、政府は都市再編事業「東京都24区化計画」を発表する。既存の23区を段階的に区画整理し、新たな“24番目の区”を創出するという前例のない政策だった。都民は週単位・日単位で住所の変更を余儀なくされ、境界線の移動に生活を揺さぶられていく。
主人公は、その再編区域にある小学校へ守衛として赴任する。停留所は番号で呼ばれ、建物は改修と撤去の途中にある不安定な姿を晒している。そこで出会った年配の守衛・渡辺は、「手順よりも、昼間との“違和感”に気づくことが大切だ」と助言する。
夜間巡回の校舎は、昼の輪郭を失い、静寂と歪みを孕んでいた。ざらついた床、ぶら下がった誘導灯、骨組みだけが残る渡り廊下。やがて主人公は、暗闇の中で一定の高さと間隔で揺れる“何か”を感知する。それは昼間、渡辺が立っていた位置や姿勢と一致していた。
「――それは、昼間――」
場面は朝へ転じる。子どもたちの声が響く校門。だが詰め所には生活の気配がなく、テレビでは東京オリンピック中止とともに「東京都24区化計画」の白紙撤回が報じられている。原状回復が進められるというニュースの中、窓ガラスには主人公の顔が映っていた。
都市の再編とともに、境界と記憶は静かに組み替えられていく。
違和感に気づこうとした者の内側まで。
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