Synopsis
夏のはじまり、クラスメイトの南野菜月からラブレターを渡された。
放課後の教室、誰もいなくなった窓際で、「好きです」と書かれた紙を受け取る。
冗談ではなかった。
菜月は恋愛対象として好きだと言った。
胸がざわついた。
嫌悪ではない。けれど、ときめきでもない。
ただ、「どうしてあたしなんだろう」という戸惑いと、応えられないという確信。
夏休みのあいだ、鎌倉に住む叔父の家に預けられる。海の近くの静かな町で、ラブレターを何度も読み返す。
好きだと言われることは、こんなにも重たいのかと知る。
叔父は多くを聞かない。ただ、「返事をしないでいるのが一番残酷かもしれない」とだけ言う。
曖昧な優しさは、期待を長引かせるだけだと。
菜月は真剣だった。だからこそ、曖昧に笑ってやり過ごすことはできない。
あたしは菜月を好きではない。
それは否定ではなく、事実だ。
夏の終わり、学校で菜月に会う。
「嬉しかった。でも、あたしは同じ気持ちにはなれない」
菜月は泣かなかった。こうなることを分かっている様だった。
友情は続くかもしれないし、終わるかもしれない。どちらでもいいと思った。
大事なのは、嘘をつかなかったことだ。
結局、恋愛にはならなかった。
けれど、あたしは誰かの真剣な想いを受け取って、返した。
それだけは、確かな出来事だった。
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