Synopsis

失くしたものを返してくれる『返却所』がある。 看板も住所もないが、 返す意思のある者だけが、迷わず辿り着く。 返却されたものは、確かに戻る。 ただし、それが以前と同じ形である保証はない。 そして引き換えに、 別の何かが、確実に欠ける。 影、時間、声、痛み、記憶、名前。 訪れる人々は、それぞれの喪失を抱えて扉を叩く。 店主はただ帳簿をつけ、 感情を交えずに返却を執行する。 一行ずつ刻まれた記録の白い余白は、 常に冷たく、遠い。 だが、帳簿の最奥には、 いつも同じ一行だけが残されている。 ――店主、未記載。 返却所は今日も、通りの外れでひっそりと開いている。 失くしたものを取り戻し、 代わりに自分を差し出す覚悟のある者のためだけに。

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Kakuyomu
Kakuyomu02/10/2026
  • Current返却所