Synopsis
建築設計士の夫・貴文が理想を描き、妻の容子がそれを形にする。 二十五年続く日曜大工は、一見すると仲睦まじい夫婦の共同作業。しかし容子の胸の中には、夫の指示に従い釘を打つたび、名もなき違和感が澱のように溜まっていた。
そんなある日、独立した娘・愛子が持ってきた「還暦祝い」の器をきっかけに、容子は気づかされる。 「私は、私の好みを何一つ知らない」
三十年使い続けた夫婦茶碗を新調しようと一人街へ出た容子は、迷い、戸惑い、そして一客の茶碗に出会う。それは、夫のこだわりを初めて拒絶し、自らの意志で選んだ「唐子模様」の磁器だった。
しかし、運命のいたずらが古い夫婦茶碗に「ひび」を入れる。 その時、容子が手に取ったのは、接着剤ではなく、使い慣れた**「金槌」**だった。
静かな午後の住宅街に響き渡る、これまでとは違う「トントントン」という音。 その音の先にある、容子の決断とは――。
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