Synopsis
帰り道、彼は確かに言った――
「好き、だと思う」。
そう聞いた瞬間、胸が高鳴った。
けれど、聞き返した私に返ってきたのは、まるで別の言葉だった。
「今日は寒いなって」
聞き間違いだったのか。
思い込みだったのか。
それとも、言ったけれどなかったことにされたのか。
翌日、彼は何も覚えていない顔で笑っていた。
曖昧な言葉、断定を避ける態度、
誰も傷つけない代わりに、何も背負わない優しさ。
私は問い詰めることを選ばず、
彼も、言い切ることを選ばなかった。
だから今でも思う。
あの日、彼は確かに言ったのだと。
――ただし、それを聞いたのは、私だけだった。
言葉が残らない恋は、
いつまでも心の中で、終わらずに反響し続ける。
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