Synopsis

決められない私と、誰にも頼らない君。秘密の喫茶店で始まる、甘くて少し苦い、ふたりだけの物語。 高校二年生の春。結城美春は「決められない」ことに悩んでいた。 何を食べるか、何を着るか、誰と話すか——そのすべてを「周りに合わせる」ことで乗り切ってきた。クラスの係も、頼まれごとも、全部引き受けて、誰も困らないように、空気を丸く保つように。そうやって生きてきた。 でも、それは本当の自分じゃない。「私、何がしたいんだろう」 ある日、美春は教室の後ろの席にいる周防秋穂に気づく。誰とも話さず、いつも一人で製菓の本を読んでいる彼女。その姿は孤独なのに、どこか凛としていて——美春は、なぜか目を離せなくなる。 そして美春は知る。秋穂が通う「秘密の喫茶店」の存在を。 住宅街の奥にひっそりと佇む、古い喫茶店。白髪の優しいマスターと、手作りのお菓子。時間の流れがゆるやかで、誰にも急かされない場所。 そこで秋穂は、誰にも見せない顔を見せる。エプロン姿で、丁寧にタルトを焼く横顔。少しだけやわらかくなる声。「……食べてみる?」と差し出される、まだ温かいお菓子。 美春は、その味に驚く。甘いだけじゃない。酸味も、苦みも、全部が計算されている。「秋穂が作ったの……?」 秋穂は小さく頷いて、少しだけ照れたように視線を逸らす。その仕草が、なぜか胸に残った。

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Kakuyomu
Kakuyomu01/16/2026
  • Current最初の味見は、いつも君に