Synopsis
受賞の夜、招いていないはずの父の名前が席次表にあった。
ペンネーム“凛”で成功を掴んだ私は、本名も、家族も、十年前に捨てた。
けれど匿名の「実名暴露」告発が拡散し、次作も仕事も崩れかける。
追い詰められた私の元に届いたのは、黒い封筒と古い航空券。
行き先はヴェネツィア。そこには――
「名前を返しに行け。水の街で待つ」 とだけ書かれていた。
水の迷路のような街で辿り着くのは、仮面の印が揺れる“郵便局”。
そこは、投函されなかった手紙を預かり、必要な人へ返す店だった。
そして鍵に刻まれた文字は、なぜか胸を刺す。LUCIA。
失われた洗礼名、沈む家族写真、父が遺した「ごめん」の欠片。
私は気づく。隠して守ったはずの“名前”が、
いちばん大切な自分を削っていたことに。
本名を名乗るか。ペンネームに逃げ切るか。
水鏡の街で、私は「ほどけなかった結び目」をほどいていく。
そして帰国の日――
物語ではなく、自分の声で“告白”する朝が来る。
Serialization Info
Web Novel