Synopsis
紀元前、太陽神の子・ファラオが絶対君主として君臨するエジプト。 ナイルの畔には、過酷な奴隷労働に喘ぎながらも、強靭な生命力で増え続ける「ヘブライの民」がいた。
主人公シフラは、ヘブライ人の居住区ゴシェンで、相棒のプアと共に「命の門番」として生きる産婆である。シフラの手は、幾千の泥と血を洗い、磨き抜かれた石のように優美で力強かった。彼女にとって、産室の蒸せ返るような汗の匂いと、生まれてくる赤子の産声こそが、世界の真実だった。
しかし、増え続ける奴隷の数に危機感を抱いたファラオは、シフラとプアを黄金の王宮へ召喚し、冷酷な勅命を下す。 「ヘブライの女の出産を助ける時、男の子であればその場で殺せ」
沈黙する王宮。香油の匂いに満ちた死の宣告。 逆らえば、彼女たちの命はない。だが、シフラの指先は覚えている。生まれたての赤子が放つ、ミルクと星を混ぜ合わせたような神聖な温もりを。彼女たちはファラオという地上の神を欺き、真の神への畏れを選び取る。
「なぜ男の子が生きているのか!」
再召喚された彼女たちが、逆巻く怒りの炎を背負ったファラオへ放ったのは、大胆不敵な「嘘」だった。 「ヘブライの女は元気すぎて、助産婦が着く前に、もう産み終えているのです」
知恵とユーモア、そして命への圧倒的な敬意を武器に、彼女たちはナイルの暗闇の中で静かな戦いを続ける。それは、一人の指導者(モーセ)の誕生へと繋がる、歴史を揺るがす「希望の伏線」となっていく。
権力の象徴であるピラミッドの影で、名もなき二人の女性が紡いだ、最も美しく慈愛に満ちた「不服従」の物語。
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