Synopsis
盲目の楽師ミレアは、生まれつき光を見ることができない。
だがその代わりに、彼女は“音”を視て生きてきた。
人の呼吸、感情の揺れ、剣が振るわれる気配――
世界は旋律となって、彼女の内側に描かれている。
旅の途中、ミレアは片腕を失った傭兵カインと出会う。
寡黙で、過去を語らず、ただ剣だけを頼りに生きる男。
彼は守れなかったものを抱えたまま、戦場を離れ、彷徨っていた。
二人が並んで歩き始めたのは、単なる偶然ではない。
ミレアは<世界の歌>と呼ばれる、世界の裏側で鳴る音を聴くことができる。
それは王国と教会が秘匿し、秩序のために管理しようとする力だった。
その価値を知る者たちに見出され、ミレアは逃げることになる。
彼女を追うのは、剣ではない。
音を記録し、正しさへと揃えようとする“制度”そのものだ。
守るために剣を取るカインは、次第に理解していく。
彼女を守ることが、かつて失ったものへの贖罪になるかもしれないことを。
派手な英雄譚ではない。
これは、欠けたものを抱えた二人が、
音と沈黙を頼りに進んでいく物語だ。
盲目の楽師は、<世界の歌>を聴く。
片腕の傭兵は、その歌が消えないよう剣を取る。
やがて二人は、逃げるだけでは終われない場所――王都へ向かう。
それが救いになるのか、破滅になるのかを、まだ誰も知らない。
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