Synopsis
十年前のその日――エーベルダイン王国で大きな政変が起きた。
圧倒的な軍事力を背景に国内外を恐怖によって脅かし、圧政を敷いていた王が討たれたのだ。
成し遂げたのは若干十六歳のアレクシス王子。
第四王子として捨て置かれていた彼は、荒れゆく国を憂えて密かに同志を募り、ついには父王を排して玉座に着いた。
人々は歓喜し、周辺国は歓迎を持って彼の即位を受け入れた。
王と共に傍若無人の限りを尽くしていた王族はことごとく処刑され、それもまた人々を熱狂の渦へと駆り立てたのだった。
……けれど。
セレスティア第三王女――この時、わずか六歳。
父王が溺愛し、最後にその行く末を託されたまだ幼すぎるこの姫までは処刑できず、アレクシスは彼女を王都から遠く離れた辺境の離宮へ住まわせることにした。
唯一の継承権を持つ者として妹姫が担ぎ上げられないよう、念入りに対策を施して。
――そして十年。
十六歳になったセレスティアは、離宮での孤独な生活に飽き飽きしていた。
兄王がしっかりと使用人を手配してくれているから生活には困らない。
けれど、彼ら彼女らは一年ほどで入れ替わってしまう上、兄王が流した噂を信じていて、ひどくセレスティアを恐れているのだ。
噂に曰く、セレスティア姫はひどいわがままだ。
曰く、先王に溺愛されていただけあって、残虐な性格をしているらしい。
――あ、俺、寝室に誘われた事ある……などなど
ひどい噂は尾ヒレ胸ビレ手足まで生えて国内外を駆け巡り、それを信じている離宮の使用人達は、セレスティアとの接触を最低限に控え、決して心を許してくれようとしない。
「――お友達が欲しいわ……」
と、友達代わりの自作のぬいぐるみ達に語りかける日々を送っていたセレスティアに、ある日、転機が訪れる。
――エリシア・レイグラム公爵令嬢。
王宮を騒がせた咎で離宮に送られてきた彼女に、セレスティアは強い興味を抱く。
聞けば、彼女は婚約者に浮気された挙げ句、その婚約者を暗殺しようとしたと衆目の前で告発されて王都を追われたのだという。
セレスティアは考える。
彼女を冤罪を晴らせば、友達になれるのではないかと。
公爵令嬢の彼女と友達になれれば、その繋がりからさらに友達を増やせるはず、と!
そんな打算まみれながらも、傷ついたエリシアを優しく受け入れるセレスティア。
噂を信じて警戒していたエリシアも、しだいに実際のセレスティアの姿に気づき絆されていく。
だが、セレスティアは知らなかった。
エリシアが王都を追われた本当の理由を……
彼女を追って、彼女の元婚約者が離宮へとやって来た時から、セレスティアの退屈だけれど平穏だった生活は一変する。
気づけば続々と兄王アレクシスに不満を持つ貴族が離宮を訪れるようになり、セレスティアに復権を迫る日々。
「そんな事をすれば、今度こそお兄様に処刑されちゃうわ!」
恐怖を抱きつつも、やってくる貴族達も腹黒い者達ばかりではっきりと断ることもできず――気づけば、セレスティアは革命軍の旗印にされていた。
――わたくしはただ、お友達が欲しかっただけなのにっ!!
セレスティアはエリシアと共に動き出す。
すべては平穏な生活を取り戻す為――ひいては兄に処されない為に!
――これは悪名高き暴虐王女と、その忠臣である血塗れ公女、二人の悪女の物語。
――そして……ただ友達を作りたかっただけの臆病な少女と、彼女を慕う親友の涙ぐましい奮闘記である。
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