Synopsis
『終わった令嬢は責任婚約から恋を知る』
終わった令嬢と
呼ばれた日から
私は鏡を閉じて
恋の色を忘れた
王宮の廊下は
朝より夜を多く知り
書き損ねた手紙より
積み上がる政務書類が
私の「明日」だった
愛より先に
責任を知り
涙より先に
義務を覚えた
――それで十分だと
心を静かに眠らせていた
**
ある夜
疲れ果てた沈黙が
恋より深く寄り添い
二つの鼓動は
偶然に眠りを分け合った
朝日の中で
誰かの手が
わたしの手に触れていた
それが
責任と呼ばれた時
心は震えながら逃げた
愛ではない
わたしを繋ぐ鎖は
未来ではなく義務であるなら
幸福ではないと信じていた
**
公爵邸の窓辺には
花も風もなく
無言の帳簿だけが
愛より重かった
あなたは冷徹に言う
責任は取る
わたしは静かに思う
心は、責任では繋がらない
**
それでも
あなたは離れなかった
わたしの書類を読み
わたしの沈黙に寄り添い
わたしの夜更けを知りながら
名前より先に
心の耐久を理解していた
わたしだけが
恋を知らず
あなたの不器用を
責任だと誤解していた
**
やがて
政治の罠が
あなたの未来を砕こうとしたとき
わたしは走った
12年の記憶を抱いて
逃げる理由は
義務ではなく
愛だった
あなたが立つ場所を守りたい
あなたが夢見る世界を壊したくない
そう思った時
初めて私は
恋をしていた
**
あなたは震えて言う
なぜその命を賭けた
わたしは泣かずに答える
あなたを…愛しているから
その一言が
あなたの鎧を砕き
長い孤独を溶かした
**
そして知らされた真実
あの夜は偶然ではなかった
責任は偽名で
本当は君を失いたくなかった
あなたは言った
愛を言えば拒まれると思った
だから、責任なら
君は逃げないと信じた
**
わたしは涙を浮かべて笑う
責任より、
あなたの弱さをもらいたかった
**
終わった令嬢と呼ばれた日々は
恋を知らなかったわたしであり
責任婚約は
恋の終わりではなく
恋の始まりだった
**
ふたりの家には
書類と花が並び
静かな幸福が
生活になった
肩に寄せた温度が
未来を温めている
**
もう私は
終わった令嬢ではない
責任から恋を知り
恋から人生を知り
今、名前より静かに
愛に呼ばれて生きている
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