Synopsis
放課後の屋上で、成瀬光はいつも同じ場所に立っていた。
そこには必ず、先輩の白石澪がいて、光の届かない空をじっと見上げていた。
「同じ空、見えてるはずなのにね」
はじめは冗談のように聞こえたその言葉が、光の心に少しだけ刺さった。
光害で星がほとんど見えない町で、二人を中心に天文部はゆっくり動き出す。
ふざけ合ったり、予算会議で無駄に緊張したり、わけのわからない理由で衝突したり。そんな些細なことが全部、青春の匂いを放っていた。
一年、また一年。
仲間は増え、減り、澪もいつかの季節に部活を離れた。
理由も、気持ちも、何一つはっきりしないまま。
空はずっと同じなのに、一緒に眺める顔ぶれだけが変わっていく。
やがて光が先輩となり、後輩に望遠鏡を教える側になった頃、天文部は最後の遠征に出る。
曇り空だったはずなのに、夜更けにかすかに風が動き、雲がひとつ、またひとつと消えていく。
その瞬間、今までこの町で見たことのない数の星が広がった。
部員たちは言葉を失い、光はただ、息を呑んだ。
——澪が探していたのは、この空だったのだろうか。
それとも、誰かと一緒に見る瞬間そのものだったのか。
答えはもう聞けない。
でも光は知っている。
あの満天の星が、自分たちが積み重ねてきたすべての季節を静かに照らしていたことを。
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