Synopsis
昭和六〇年三月、まだ寒い新潟の早朝、永友は、口から胃潰瘍の血を吹いて自宅台所で倒れた。
一瞬。過ぎてしまえば人生は、刹那。あれが全てそんなに遠い昔のことだったとは思えない。ほんの数年前に思える。軍隊、戦争、爆撃、俺は行かずに済んだが、特攻隊というものもあった。
特攻攻撃の離陸に失敗して、脚を椰子にぶつけて胴体着陸した奴がいた。あれは誰だったか。七五戦隊のはずだが、どの中隊の奴だったかも思い出せない。
戦隊から特攻に選ばれたのは一〇人だったと思う。無線や機銃は関係ないから、全員操縦者だ。誰だったかな。渡部、市川、根本、川瀬、坂本、張、浅見、宮下、清水、もうひとりいたはずだ。
なんだかおかしいな。俺が行ったような気もするが、俺は生きているし、機種改変で内地に帰ったが、飛行機が無いまま終戦になった。
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