Synopsis
『お前はもう用済みだ。経験値も金も食い潰すだけの役立たずが』――
命がけで支えてきた勇者パーティーから、一方的な通告を受けたその日、俺は全てを失った。炊事係として、サポート係として、危険な偵察も汚れ仕事も、全て押し付けられながら感謝すらされなかった俺、ハル。戦闘スキルが平凡で、唯一のスキルは『神級SSSランク[無限]黄金カツカレー(半額シール付き)』というふざけた名前だという理由だけで、「才能ゼロ」「コストの塊」と嘲られた。功績は横取りされ、魔物の巣の手前で路銀とボロ服だけ握らされて放り出され、ギルドには『無能を抱える余裕はない』と冷たく門前払い。腹は空き、身体は震え、雨に打たれながら、街外れの泥の上で夜を明かすしかない――これが、世界のために尽くした“結果”だった。
だが、彼らは知らなかった。俺自身ですら理解していなかった、このスキルの本当の意味を。空腹で倒れかけた俺は、最期の悪あがきのつもりで、あのふざけた名を口にする。「……[無限]黄金カツカレー(半額シール付き)」次の瞬間、豪雨の中に立ちのぼる信じられない香り。目の前に現れたのは、黄金色に輝くカツと濃厚なルーが盛られた、どこまでも旨そうな一皿だった。
一口食べた瞬間、世界が反転する。体力も魔力も完全回復、全ステータスは桁違いに跳ね上がり、身体にまとわりついていた疲労も呪いも汚れも、一瞬で浄化される。食えば食うほど限界が更新され、しかも“無限”の名の通り、皿は何度でも召喚可能。同じ黄金カツカレーを口にした者にも、同様の超強化が付与されることが判明する。さらに「半額シール付き」の謎補正により、なぜか使っても使ってもコストはマイナスどころか、世界のどこかから金貨がチャリンと俺の懐に転がり込む――追放理由にされた“コスト問題”が、実は世界経済を歪ませるレベルの錬金チートだったと気づいたとき、俺は静かに決意した。この力は、俺を踏みにじった連中のためではなく、俺をちゃんと大事にできる誰かのために使う、と。
俺は動き出す。[無限]黄金カツカレーを食べては超強化状態で高難度ダンジョンに潜り、ソロでボスを叩き伏せ、レアドロップと金貨ボーナスで一気に大富豪へ。街外れの雨ざらしだった場所に、『黄金カツカレー食堂』を構えた。看板に偽りなし。ここで出す一皿は、誰が食べても強くなる。噂は瞬く間に広まり、腕に覚えのある冒険者から、堅物の王国騎士団、神殿の高位神官、さらには人化した古竜まで、皆が「強くなる一皿」を求めて列をなす。黄金カツカレーを知る者たちはランクアップを重ね、やがて俺のもとに集った仲間たちは、元勇者パーティーを遥かに凌ぐ“真の最強パーティー”となった。ギルドは俺を『食と加護の賢者』として特別顧問に迎え、王国は国賓待遇と広大な専用領地を提供。俺は気ままなスローライフを送りながら、気に入った者には黄金カツカレーをふるまい、弱き者をさりげなく救い、ときどき気まぐれにダンジョンに潜っては新たな伝説を増やしていく。
そして、約束された清算のときが来る。[無限]黄金カツカレーの加護を失った元勇者パーティーは、実力不足を露呈し、攻略は失敗続き、スポンサーからも見放され、国王から叱責される。無茶な戦いで次々と負傷し、最後には魔王軍に完膚なきまで叩き潰され、ボロボロで辿り着いた先は――よりにもよって、俺の黄金カツカレー食堂だった。「おい店主!カレーを出せ!元勇者様だぞ、タダで食わせろ!」店内が凍り付く中、俺は静かに名乗り、あの日の仕打ちを淡々と語る。青ざめて土下座し、「助けてくれ」と縋る彼らに、俺が告げる条件はただ一つ。「客として正当に金を払い、二度と他人を踏みにじらないと誓うなら、一皿だけは出そう」渋々差し出した最後の金貨と引き換えに、彼らは黄金カツカレーを食べ、一時的に回復し力を取り戻す――その瞬間を、ギルド職員と王国使者がしっかりと見届けていた。
追放の不正と功績横領の証拠はすでに揃っている。勇者は称号剝奪、聖女は神殿追放、仲間たちは重労働刑と辺境送り。地に叩き落とされた彼らを前に、俺は胸を張って嘲笑うことすらしない。ただ一言だけ。「人を雑に扱うと、半額シール以下の価値になるんだね」
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