Synopsis
王都の中心から少し離れた城の塔は、風がよく通る。
その夜わたし――エリスは、豪奢すぎるほどの寝室のバルコニーに出て、夜風を胸いっぱいに吸い込んだ。
「……本当に、ここはわたしの部屋でいいのかしら」
つい昨日まで、わたしは婚約者であったアルノルト殿下からの侮蔑に耐え、社交界で嘲笑され、家族にさえ冷たくされていたのに。
まさか隣国ファルゼンの“暴君王”と呼ばれるレオンハルト陛下に見初められ、護衛兼客人として迎えられるとは、夢にも思っていなかった。
……いや、正確には“客人”などという生易しい扱いではない。
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